ぼくの初「担当」仕事①そのスジの方でした!
話はさかのぼりますが、僕は大学を卒業したら、葬儀社に!と決めていましたが、すぐにうちの会社に入ったわけではありません。
他の業界でもよくあるようですが、親父の知り合いの葬儀社に修行に出されました。
そこで僕は一から現場で学んでいったわけですが幸いなことに入社して1年ほどたったある日、
「見積もり、自分でやってみるか?」と先輩が声をかけてくれたのです。
はやる気持ちを抑えつつ、お客様へのご挨拶は霊安室。
先方で対応下さったのは奥様ではなく上品で落ち着き払った「紳士」風の方でした。
おそらく、会社の社長さんで部下の方なんだろう・・・
周りの方が屈強そうな方がやや多い気がしましたが、先輩もその時は僕と同様、社葬かな、合同葬かなくらいに思っていたそうです。
しかし、後日、ご自宅に打ち合わせに伺うと・・・
スキンヘッド&眉紋(いわゆる眉の刺青です)の人や首元から太めの喜平ネックレスと刺青が見え隠れし、指の欠けている人、床の間には日本刀・・・
「親父ぃ~」と号泣する太い声、嗚咽・・・
先日名刺をお渡しした紳士然とした方はその場には出てこられませんでした。
いわゆる、MBA持ちなど、懐刀的ポジションのインテリ●●●らしかったです・・・
打ち合わせ自体は主に子分、いや部下・・の方々と行いました。
最終決定はやはり喪主の「姐さん」つまり、奥様です。
しかしこの方がさっきから競馬に夢中です。
競馬新聞片手に「イケ!イケ!いけ~っ!」・・・
「姐さん、お願いしますよ。親分が亡くなってるんスから・・」
と子分が何度懇願しても生返事。
なかなか、話をきいてくれません。
あとから考えるとさみしさの裏返しだったんでしょうね・・・。
でも、その時は僕も先輩も必死です。
ひたすら冷や汗をかきながら言葉を選んで説明し、待ちの数時間でした。
なんとか打ち合わせを終えて会社への帰り道。
「ほんとに、ごめんな、おれもその筋のとは、気がつかなかった・・」
先輩のなぐさめともボヤキとも言えない言葉に本当にこの初担当仕事、やり遂げられるのか・・・と不安な僕でした。