金仏壇は小さな芸術工芸品
東京では、最近ではお目にかかることは少なくなってきていますが、
田舎のお仏壇が金仏壇、という方は多いのではないでしょうか。
白木に漆(うるし)を塗り、金箔(きんぱく)や金粉を施すことからこの名が付いています。
前回お仏壇の起源についてご紹介しましたが、
金仏壇のこの凝ったつくりは、各宗派の本山寺院の本堂(内陣)を真似たものだからです。
したがって、宗派や地域により造作が異なります。
ご存知のとおり、一番値がはるのもこの金仏壇。
でもその作られている工程を知ると納得です。
本式のものとなると、それぞれの工程に専門の職人が存在し、
一枚の板から仏壇が出来上がるまでには約3カ月かかるのです。
●木地づくり(木地師)
仏壇の木地をつくり、仮組みを行う工程です。
あとで漆を塗るので、厚み分を考慮にいれて制作します。
素材には桧(ヒノキ)・松・欅(ケヤキ)・杉、部分的に合板・ボードが用いられますので、
それによって値段も変わります。
●彫刻(彫刻師)
欄間(らんま)や障子の腰、柱飾りなど、多くの箇所を
何十という種類の鑿(のみ)を使い分けて彫り上げていきます。
現在は国内の技術者が少なく、また人件費も高いため、
9割以上は中国など海外で制作されているのが現状です。
安価品にはプラスチック製が使用されていますが、
それでも同じ形のものを量産しなければ採算が取れないため、これも海外製のことが多いです。
●漆塗り(漆職人)
本塗り(漆を塗る)前に、木の痩せ防止やヤニ止め、漆の密着度を高めるために、
すべての部品をばらして下地ぬりを行います。
伝統技法では膠(にかわ)地・砥(とぎ)の粉地・堅地といった作業になりますが、
現在多くはポリエステル系及び、ポリウレタン系樹脂塗料が用いられています。
ここでも価格に差が出てきますね。
そして漆塗りです。伝統的には、天然漆を刷毛塗りします。
天然漆は摂氏25~30度、湿度約80%に保たれた室(むろ)で、
約2日掛けて乾燥させる必要があります。
それを研ぎ、また漆を塗り、室で乾燥・・・を何度も繰り返します。
高級品ほどその回数が多いのです。
現在では漆の代わりに、
カシューやエポキシなどの化学塗料を吹付け、乾燥するのを
数回行う工法もあります。
当然お安いです。
●金箔・金粉・蒔絵(まきえ) (金箔職人、蒔絵師など)
金箔を貼るには接着剤として漆を用います。
漆の拭き取りかげんで金箔の輝きが違い、多く拭き取るとピカピカと光ります。(光り仕上げ)
漆のふき取り量を少なくすると落ち着いた光になり、これを消し仕上げと言います。
金粉は蒔くために金箔に比べて同じ面積あたりの使用量が3~4倍多くなり、
そのため、重厚な印象に仕上がりますが、価格も上がります。
蒔絵は絵漆を蒔絵専用の筆に取り文様を描くものです。
このほか螺鈿(らでん)細工・沈金も用いられますが、これも手作業。
値が張るので、最近は廉価にするため、シルクスクリーン印刷も行われています。
●金具(金具職人)
補強や装飾のために施されます。
素材は銅・真鍮(しんちゅう)・アルミ・鉄や樹脂製のものがあり、それによっても値段が変わります。
伝統的には鏨(たがね)を使った手打ち金具ですが、
現在多くはプレス・電気鋳造などでつくられています。
実はそれぞれの工程で国の伝統工芸としてみとめられているものも多いんですね。
これだけ手間がかかり、思いのこめられたものですから
100万円を超えるのも納得しませんか。
ただし、きちんとどれだけ手作業か、素材がどんなものか、はチェックしてみてくださいね。